[あ行]
閾値(いきち)
薬物などが生体に反応を引き起こす最小の用量。毒性学では薬物などを摂取(せっしゅ)しても、摂取量が閾値(いきち)以下であれば、生体には影響がないと考えられている。
一日許容摂取量
生涯を通じて連続して毎日食べても有害な影響を受けることがないと考えられる量をいう。ADI(Acceptable daily intake)ともいう。動物実験で得られた無有害性影響量(NOAEL)を外挿(がいそう)することで設定される。(→同義語:一日耐容摂取量(TDI;Tolerable daily intake)
壊死(えし)
体内の組織や器官の細胞が病理学的に死ぬこと。
エストラジオール(17β−)
体内で合成される女性ホルモンの一つ。女性ホルモンのうち、作用が最も強力である。
エポキシ樹脂
ビスフェノールAを原料とする樹脂の一つ。ポリカーボネートとエポキシ樹脂では、ビスフェノールAがつながっている部分の構造が異なる。缶詰の一部にさび止めとしても使用されている。
[か行]
外因性内分泌かく乱物質
「環境ホルモン」と同じ意味をあらわす。(→同義語:環境ホルモン)
外挿(がいそう)
実際に得られた実験値の結果から、実験で求められていない数値、影響などを推定すること。ヒトの安全基準も外挿(がいそう)で求められており、動物実験から得られた数値を1/100もしくは1/1000にすることにより設定されている。この1/100や1/1000は一種の安全係数といえる。
外分泌物質
汗、涙、消化液などは外分泌物といわれ、分泌物をつくる器官から体の外や胃・腸などの消化器官に送られる。
環境負荷 化学物質が環境中に放出された時、環境に対して影響を及ぼすこと。環境ホルモンといわれる物質の他に炭酸ガスや自動車の排気ガス、オゾン層破壊物質なども環境負荷を与える物質である。
環境ホルモン 環境ホルモンはその定義があいまいで不明確な用語であったが、現在では「外部から体内に取り込まれた場合に、本来営まれている正常なホルモン作用に影響を与える物質」を意味する。科学的には「外因性内分泌かく乱物質」と呼ばれている。環境ホルモンとしては、河川や土中などの環境中や体の中に残留し人や生物に影響を与えることが報告されている有機スズ類、ダイオキシン類、PCB(ポリ塩化ビフェニル)、農薬、除草剤、殺虫剤や重金属の一部がある。その他、フタル酸類、アルキルフェノール類やビスフェノールAなどの化学物質が環境ホルモンとして疑われている。
環境ホルモン緊急全国一斉調査 環境庁が出した「環境ホルモン戦略計画SPEED'98」に従って実施した現状把握のための調査。河川および魚の調査を行っており、対象物質として17β−エストラジオール(ヒト女性ホルモンの一つ)も加えられた。
環境ホルモン作用
環境ホルモンが外因性内分泌かく乱物質と同じ意味であるとすると、環境ホルモン 作用は「ホルモン様作用」もしくは環境ホルモンに基づく「内分泌かく乱作用」であると考えられる。
環境ホルモン戦略計画SPEED '98
環境庁が1998年に出した環境ホルモン対策。環境中での化学物質の分布調査や野生動物の影響調査を行い、これらを統合して対策を立てる計画。
(環境庁ホームページhttp://www.eic.or.jp/eanet/を参照)
逆U字現象
化学物質を試験動物に与えた場合、一旦何の悪影響も見られなくなっても、更に低い用量で影響が見られることがあるとする仮説。「環境ホルモン」問題に関連して、環境から摂取(せっしゅ)する場合の影響や、化学物質の毒性評価の見直しにからめて提唱された。
経口投与
毒性物質が口を通して体内に侵入することを想定し、試験物質をえさや水に混合して食べさせたり、あるいは注射器などを用いて直接、胃に与える方法をいう。試験物質は、消化器官で吸収され、血液によって肝臓に運ばれ代謝を受ける。
検出限界
その分析方法で、測定することが出来る最小の数値で、分析方法や条件などで異なる。その数値以下の量や濃度等は測定することができない。
[さ行]
催奇形性(さいきけいせい)
妊娠中の母親が、何らかの医薬品や化学物質を摂取(せっしゅ)したり、何らかの経路で体内に取り込んだ場合に、胎児に形態異常や機能障害を引き起こす性質をいう。つまり、次世代に対して先天的に異常を引き起こす性質ともいえる。
再現試験
同じ試験を繰り返すこと。試験結果が再現されることで、その試験結果の信頼性が上がる。毒性学の世界だけでなく、すべての科学の世界で基本的な原理である。
材質規格
食品衛生法で、食器、器具、包装に使われる材料に含まれている特定の成分について定められた規格。
植物エストロゲン
植物中に含まれる女性ホルモン様作用を有する物質のこと。植物由来の女性ホルモン様物質ともいう。ヒトや野生生物が食料としている大豆、もやし、クローバーなどにも含まれている。
重合反応
化学物質が反応して分子量が大きくなること。出発物質をモノマー(単量体)、得られた高分子量のものをポリマー(重合体)という。
静脈内投与
毒性試験において、試験物質を静脈に注射して与える方法をいう。静脈内投与の場合、消化器官や腸管膜血管からの吸収を経ないので、経口投与や腹腔内投与よりも作用が早い。
女性ホルモン
卵巣などから分泌される性ホルモンをいい、17β−エストラジオール、エストロン、エストリオールなどがあげられる。(→同義語:エストロゲン)
女性ホルモン様物質
体内で合成される女性ホルモンとは異なり、体内で合成されない物質が体内に取り込まれることにより女性ホルモンに似た作用を与える物質のことをいう。女性ホルモン様物質の女性ホルモン作用の強さは、物質ごとに大きな差がある。
精子生産効率
1日に精巣でつくられる精子の数(DSP:Daily Sperm Production)を精巣の重量で割ったもの。 精子生産効率=DSP÷精巣重量
生殖毒性
医薬品や化学物質がヒトや動物の生殖能力、生まれてきた子供に何らかの有害な影響を及ぼすこと。
[た行]
ダイオキシン類
ポリ塩化ジベンゾパラジオキサン、ポリ塩化ジベンゾフランと呼ばれる物質の総称で、塩素の数や結合部位の差で多くの異性体がある。最も毒性が強いといわれているのが、2,3,7,8−四塩化ジベンゾパラジオキシンである。ダイオキシン類は、強い毒性を持ち、肝臓、胸腺、リンパ系に作用し、壊死(えし)、萎縮、免疫不全を起すほか催奇形性(さいきけいせい)があり、また内分泌かく乱作用もあるとされている。
蓄積性
人や動物、魚などが化学物質を摂取(せっしゅ)したとき、体内で分解されにくいため、体外に排出されず、脂肪などにたまってゆく性質をいう。例えば、DDTなどの有機塩素系農薬やPCBなどの有機塩素系化合物があげられる。
統計学的有意差
誤差を考慮しても、統計的に十分差があると考えられる状態。動物実験で使用した数が統計的に計算できない場合は、影響があるかないか判断できない。
投与経路
毒性試験において、試験物質を試験動物に与える経路をいう。経口投与、腹腔内投与、静脈内投与、吸入、皮膚吸収などの投与方法がある。
トリブチル錫(すず)化合物
貝がらなどの付着を防止する効果があり、船底塗料や魚網の防汚剤として広く使用されていた。蓄積性があり、成長阻害や白血球リンパ球の減少を引き起こす。現在では、「環境ホルモン」の疑いのある物質としてもとりあげられている。(→同義語:TBT)
[な行]
内分泌物質
「ホルモン」を参照。
ネガティブコントロール
化学物質の毒性を調べるための動物実験において、試験する化学物質を与えることと並行して、その化学物質を与えずにすべての試験条件をそろえて同じ実験を行うこと。陰性対照ともいう。
生物を用いる動物実験では誤差が多いことから、得られた結果の有効性を確認するためには試験する化学物質を与えないときの臓器重量などのデータが基準として重要な意味をもつ。この基準がばらつくと試験物質を与えたために現われた影響か、あるいはその影響の度合がわからなくなることから、動物実験ではネガティブコントロールも入れて実施し、かつ試験動物の数を増やしてより正確なデータを得ることが重要である。
[は行]
ハザード
人または環境に対して、害を与える恐れのある影響や現象をいう。
ビスフェノールA
フェノールとアセトンから合成される化学物質。BPAともいう。ポリカーボネートやエポキシ樹脂の主原料である。その他の化学品の原料やプラスチックの添加剤としても少量使用されている。(→同義語:BPA)
腹腔内投与
毒性試験において、試験物質を腹腔に注射して与える方法をいう。腹腔内投与は、経口投与と異なり消化器官による吸収を経ないで腸管膜血管から吸収されるので、経口投与よりも作用が早い。
分解性
自然界に放出された時に、微生物、酸素、光などによって他の物質に変わる性質をいう。
変異原性(へんいげんせい)
生物の遺伝子に化学物質などが作用して、選択的に化学反応を起こしたり、遺伝子の分子を代えたりする性質。
ポジティブコントロール
化学物質の毒性を調べるための動物実験において、その化学物質を与えることと並行して、確実に影響のあることが分かっている他の化学物質を与えて影響がでることを確認することをいい、陽性対照ともいう。
ポジティブコントロールは、生物を用いる動物実験そのものに誤差が多いことから、得られた結果の有効性を確認するために採用される。さらに、使用する実験動物の数を増やしてより正確なデータを得ることも重要である。
ポリカーボネート
ビスフェノールA(BPA)を原料とする樹脂(プラスチック)。食器やほ乳びん等の家庭用品、電気・電子機器、自動車などの工業部品、コンパクト・ディスク(CD)等の広い分野で使用されている。
ホルモン
生物の体の中でつくられる(内因性という)化学物質のことで、血液によって様々な器官に送られ、細胞にあるホルモン受容体(レセプター)と結合して器官のはたらきを調整する。卵巣などでつくられる女性ホルモン、精巣などでつくられる男性ホルモンなどの性ホルモンの他に、副腎、甲状腺などでつくられる各種ホルモンが数十種、確認されている。
ホルモンかく乱作用
体内のホルモン・バランスを乱すことで生体に悪影響を与えること。(→同義語:内分泌かく乱作用)
ホルモン様作用
体内で合成されない化学物質が人や生物の体の中に入って、体の中でつくられたホルモンの生産や分泌を乱したり、作用を阻害して、生殖、発生、成長に影響を及ぼすこと。「環境ホルモン」といわれるものの中には、女性ホルモンに似た作用(女性ホルモン様作用)をする化学物質が多い。
[ま行]
無影響量
毒性試験において、与えた試験物質の何らかの影響が試験動物に認められない最高の用量をいう。NOEL(No-observed effect level)ともいう。
無有害性影響量
毒性試験において、与えた試験物質の有害な影響が試験動物の臓器に認められない最高の用量をいう。NOAEL(No observed adverse effect level)、または無副作用量ともいう。
[や行]
溶出規格
食品衛生法で、食器、器具、包装に使われる材料から食品の代わりに想定した試験薬品(液体)、例えば、水、20%アルコール、4%酢酸などに溶け出してくる特定の成分の量について定めた規格。
用量
毒性試験において、試験動物に1回あたり与える試験物質の量。用量の比較については、試験物質を与える経路や試験動物の種類、体重などによって影響の度合が変化する。
用量・反応曲線
毒性学では、毒性物質の用量が多いほど生体に影響を引き起こす度合が大きくなる傾向がある。この関係を横軸に用量、縦軸に影響の度合としてグラフに表わしたものをいう。ドーズ・レスポンス・カーブ(Dose-response curve)ともいう。
[ら行]
リスク
リスクは、人または環境に対して望ましくない結果(ハザード)の大きさとそれが起こる確率によって決められる。リスク=ハザード×発生する確率
リスクには確率の概念が含まれることから、その評価は「白か黒か」ではなく、定量的な評価が必要とされる。
レセプター
細胞膜や細胞の核に存在する部位をいい、ホルモンと結合することで活性化し、生体内の反応が引き起こされる。(→同義語:受容体。ホルモン・レセプターともいう)
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