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動物実験Top > 国内外の動物実験に関する規制

 

日本における動物実験の代替研究事業、国内外の動物実験ルール

海外の規制やルール

動物実験に関する国際的原則

医学生物学領域の動物実験に関する国際原則

医学生物学領域の動物実験に関する国際原則は、動物実験に関する国際的な原則としてとらえられています。

2012年、この原則がCIOMS(国際医学団体協議会)によって改訂され、動物福祉について踏み込んだ内容になりました。 この改訂にはICLAS(国際動物実験会議)の協力が求められ、協働で作成されました。 
医学生物学領域の動物実験に関する国際原則
最終案の訳はこちらに掲載されています

ILAR(米国実験動物研究教会) 「実験動物の福祉と利用に関するガイドブック」

実験動物の福祉に関するガイドブックとしては、国際的に参考にされているガイドブックです。

2010年に改訂され第8版が出ています。国際的な動物実験機関認証機関AAALACも、そのガイドを基準にしています。

OECDのテストガイドライン

国際的合意がされた化学物質の試験方法として、OECDガイドラインがあり各国関連法の基礎試験となっています。OECD(経済協力開発機構)は加盟国に対し、化学物質の毒性の試験方法についてテストガイドライン(TG)を出し、その採用を勧告しています。

化粧品については、EU7次改正で、動物実験をした製品は販売できなくなっています。EU化粧品指令第7次改正において、OECDで認証された代替法を安全性試験に用いなければならない、代替法がなくても2013年以降 動物実験をした製品は販売できないと定められました。

日本の化粧品メーカー

EU諸国に化粧品を販売している日本の化粧品メーカーは、EU7次改正に反対し、改正を何度も延期させてきましたが、時代の流れに逆らえず、実験廃止を余儀なくされています。

日本は欧米に遅れをとっていましたが、2015年7月、花王が独自に開発した眼刺激性試験代替法STE試験がOECDテストガイドライン491として承認され、今後の利用が期待されます。これは<細胞培養系の眼刺激性試験代替法としては世界で初めて非刺激性物質、強刺激性物質のGHS区分を可能とする>ものだそうです。

悪名高い急性経口毒性試験 TG401について

1986年OECDは急性の経口毒性試験のためのガイドラインの変更を発表し、代替法についての議論が始まりました。その後、いくつもの動物実験代替の方法がガイドラインとしてリストに掲載されました。多くの動物を死にいたらしめる悪名高かった急性経口毒性試験 番号TG401は、1981年に採択され行われてきましたが、2002年12月、ガイドラインから削除されました。

ICH (日米EU医薬品規制調和国際会議) ワーキンググループガイドライン

ICH (日米EU医薬品規制調和国際会議)は1990年に設立された組織です。日本・米国・EUにおける新薬の承認に際し、安全性試験方法を定めることにより、不必要な試験の繰り返しをなくし、また不必要な動物実験も減らすことを目的としています。

品質・有効性・安全性などに対してそれぞれワーキンググループ(WG)があり、動物実験に関わるものは、主に安全性のガイドラインを決めるワーキンググループです。各ワーキンググループ (WG) において、動物数の削減が各WGガイドラインの目的として明記され、3Rの浸透が強く求められています。

ICHでは、Safetyに関するガイドラインとして下記のものがあります。

Safety:安全性 (非臨床に関するガイドライン)
ICH-S1 がん原性試験
ICH-S2 遺伝毒性試験
ICH-S3 トキシコキネティクスと薬物動態
ICH-S4 毒性試験
ICH-S5 生殖発生毒性試験
ICH-S6 バイオテクノロジー応用医薬品
ICH-S7 薬理試験
ICH-S8 免疫毒性試験
ICH-S9 抗悪性腫瘍薬の非臨床評価
ICH-S10 光安全性評価
ICH-S11 小児用医薬品開発の非臨床試験

少し古いデータですが、WGの活動です。

ICH -S9 (抗悪性腫瘍薬の非臨床評価):2013年11月、PhRMA (米国研究製薬工業協会)が、S9GLで行政と業界との認識に隔たりがあり、必ずしも動物実験の3Rにつながっていないことを課題とし、Q&A作成を提案しました。

ICH-S5 (生殖発生毒性試験):S5(R3)に向け 検討されるべき事項として代替法の利用があげられています (2014/11)

ICH S10 (光安全性評価)の目的:不要な試験を省き、医薬品開発において動物数を削減すること (2012/12)

ICH-S6 (バイオテクノロジー応用医薬品)の目的:バイオ医薬品の効率的な開発即死と実験動物使用の削減(3R) (2010/12)

国際協調 

国際協調を調整する機関は製品・対象物ごとにあり、医薬品については日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH)、化粧品については化粧品国際規制会議(ICCR)、世界動物保健機関 (OIE)、動物用医薬品の承認審査資料の調和に関する国際協力会議(VICH - OIEの傘下で活動)などがありますが、いづれにおいても、今では動物福祉3Rsの理念が盛り込まれ、実際に動物の犠牲を減らすため、ガイドラインの修正などがで行われています。

上述のICHは、2015年10月、名称が「医薬品規制調査国際会議」に変更され、スイス法に基づく国際的な非営利法人に変わりました。2015年12月にはアメリカで、第 1 回医薬品規制調和国際会議(ICH)が開催されました。、ICHの安全性・非臨床に関するガイドラインは、ICH-S1~ICH-S11があり、各ガイドラインの目的に、3Rsの観点から動物数の削減を図ること等が書かれています。

動物実験の検証制度 (日本)

文部科学省、農林水産省、厚生労働省管轄の研究機関、大学などが行う動物実験を検証するための制度があります。

 1.大学等の研究機関を評価する【動物実験に関する相互認証プログラム】2009年~。

 2.製薬会社を評価する【ヒューマンサイエンス振興財団動物実験実施施設認証センター】2008年~。

 3.実験動物ブリーダーを評価する【実験動物生産施設等福祉調査】2009年~。

検証制度ができた背景

2005年に動物愛護法か改正され、動物実験に関する倫理の理念=3Rs が盛り込まれました。この法律改正は、従来の動物実験の実施体制を大きく変えました。文部科学省、厚生労働省、農林水産省は、動物実験に関する基本指針を制定し、動物実験委員会の設置や外部検証などが盛り込まれました。しかしこの時点では厚生労働省の指針には外部検証ははいっていませんでした。

動物愛護法はその後2012年にも改正され、<実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準>は2013年に改正されました。外部検証が盛り込まれていなかった厚生労働省の指針は2015年に改正され、外部検証に努めることが明文化されました。現在、文科省、厚労省、農水省のそれぞれの基本指針全てにおいて、自己点検評価、情報の公開、外部検証が盛り込まれています。

3Rの推進については、苦痛の軽減については義務になっていますが、動物の置き換えとと使用数の削減については配慮事項どまりとなっています。

検証制度の概要

文部科学省 動物実験に関する相互認証プログラム

文部科学省所管の大学や研究機関は、国立大学動物実験施設協議会(国動協)、公私立大学動物実験施設協議会(公私動協議))の検証プログラムによる相互検証を行っています。

簡素かつ、少ない設問にチェックを入れるだけの内容になっています。多くの課題が残されており、大幅は改善が求められます。

厚生労働省 動物実験実施施設認証センター

厚生労働省所管の製薬会社や、動物実験受託企業に対し、財団法人ヒューマンサイエンス振興財団の動物実験実施施設認証センターにより認証を行っています。

2008年から外部評価事業を行っています。

申請者による自主評価を記載した書面審査と、実験施設を訪問する実地評価が行われ、認証の有効期間は3年間です。

農林水産省 実験動物生産施設等福祉調査

ブリーダーに対する自主規制です。農林水産省所管の実験動物生産会社に対し、(社)日本実験動物教会(日動教)により、実験動物生産施設等福祉調査が行われています。

2009年から行われた第2期実験動物生産施設等福祉調査では、62の設問からなる調査票への記入と、3名の調査員による訪問調査が行われます。訪問調査時間は4時間。

評価の基準は4段階からなり、すべて動物福祉が基準になっています。

制度の改善点として考えられる点

動物実験が適正に行われているか、適切に内部で審査されているか、外部検証は適切に行われたのかを現在公開されている情報だけで把握することは困難です。

動物実験に関する基本指針では、動物実験委員会の設置が盛り込まれましたが、指針は順守義務はないため、委員会の設置がない研究機関も存在します。

文部科学省の相互認証プログラムは、改善の余地が多い。
設問か抽象的(適正に動物実験が実施されているか)
設問数が極端に少ない。(10問程度)
チェックシートにチェックをいれるだけの簡単な形式
関係者どおしの相互チェック

内外から、1つの評価機関に統一するべきではないかとの声もありますが、この文部科学省のものに統一されると、問題があるように思います。
他にも認識されている問題として
直接動物実験に関わる人の意識向上には至っていない、
認証有効期限の設定がない。 
自己点検の信頼性、などがあります。

GLP

GLPは前臨床試験の信頼性を高めるために決められた厚生労働省の省令です。

新薬を開発する際、その有効性と安全性を確かめるため、人を対象とした臨床試験の前にウサギやイヌなどを使った動物実験(in vivo)、あるいは細胞培養などの試験管内の実験(in vitro)を行いますが、これらを前臨床(非臨床)試験といいます。

この前臨床試験では、薬の効き目を調べる薬効薬理研究、動物の体内でどのように吸収・代謝・排泄されるかを調べる薬物動態研究、そして毒性試験が行われます。重要なのは、新薬候補を人が服用する前に、安全性調査を正確に行うことです。

そこで前臨床試験データを作成するにあたって、その信頼性を高めるために決められた試験の実施基準として、厚生労働省による「省令」の形で施行されたのが、GLP(Good Laboratory Practice)です。

動物実験の検証制度 (海外)

AAALAC(国際的に認証されている動物実験施設認証機関)

国際実験動物ケア評価認証協会と訳され、国際的に認められている動物実験施設の認証機関です。

米国の実験動物資源局 (Institute of Laboratory Animal Resources)(ILAR)の基準をもとに、その審査項目は多岐にわたっています。評価をする際には、ILAR(米国実験動物研究教会)の 「実験動物の福祉と利用に関するガイドブック」が使われています。

AAALACの認証は、日本において初めて取得したのは、実験用サルの大量生産、実験を行う大企業イナ・リサーチが2005年に、それにつづいて2007年北海道大学獣医学部が国内の大学で初めて認証を取得し、2015年現在では5機関が認証をうけています。

米国ではこの認証を受けている施設で動物虐待が相次いで発覚し、動物福祉法違反を繰り返い指摘されているとのニュースもあります。認証は一つの目安とはなりますが、詳細な根拠に基づく書類、書類以外のソフトやハード面をどう市民が理解し、把握できる形で審査・検証、情報公開していくのかが、問われなければいけません。

 

日本医療研究開発機構 (AMED)と薬事法改正

日本医療研究開発機構 (AMED)

2015年、国立研究開発法人【日本医療研究開発機構】(AMED)が創設されました。2013年、政府は「日本再興戦略」を策定し、【革新的な医療技術を世界に先駆けて実用化していく】こと、【優れた医薬品、医療技術などを開発し、医薬品市場の世界展開】などが目標として設定され、目標実現のため医療分野の研究開発を総合的に推進する司令塔機能として創設されました。

AMEDは、これまで文部科学省・厚生労働省・経済産業省にて別々に計上されてきた医療分野の研究開発に関する予算を集約し、基礎研究からその製品化にいたるまで、総合的に管理します。予算は国からAMEDに補助金として拠出され、 AMEDから、研究者・研究機関に対し委託という形で支払われます。内閣府に設置された健康・医療戦略推進本部が文部科学省、厚生労働省、経済産業省と調整を行います。それぞれの省からAMEDへ補助金等が提供され、AMEDから研究機関、研究者へ委託事業を通して研究費が配分されます。

AMEDの理事長や監事は内閣総理大臣が任命することになっており、初期のメンバーとして、厚生労働省、経済産業省、(独)科学技術振興機構、(独)理化学研究所、(独)医薬基盤研究所、(独)新エネルギー、産業技術総合開発機構から総勢102名(平成26年度)出されています。これ以外に任期の期限がある職員が200名ほど確保されています。

薬事法改正

薬事法もこの目標の実現のため、2014年に改正されました。 その名称も、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)に変わりました。

新しい法律には、医療機器の章が追加され、医療機器や再生医療の開発がより促進されるようになっています。【先がけ審査指定制度】や【未承認薬迅速実用化スキーム】など体制の構築も行われました。薬価制度も変わりました。

今までの生活習慣病用治療薬開発から、アンメット・メディカル・ニーズ(いまだに治療法が見つかっていない疾患に対する医療ニーズ)や、シーズ(=ニーズが消費者が求めているものを意味するのに対し、シーズは世の中にない新しい価値を提供し市場を開拓する種)の研究を行い、世界に先駆け革新的な医薬品、医薬部外品、再生医療品を、もっと世界の市場に出していこう、そのためには、産官学が連携し、縦割り行政ではなく、省庁を横断した取り組みが行われなければならないと、日本をあげて取り組んでいます。

医薬品医療機器総合機構 (PMDA)

AMEDが研究の司令塔なら、その新薬の審査は(独)医薬品医療機器総合機構 (PMDA)が行います。PMDAは2004年に設立され、治験前から承認までを一貫した体制で指導・審査(承認審査)する等の業務を行っています。PMDAはAMEDと新薬創出へ向けて、2015年連携協定を結びました。また同じく2015年、PMDA国際戦略2015を策定・公表しました。同じ日に 厚生労働省も国際薬事規制調和戦略を策定、発表しています。

研究の現場で3Rsが徹底して実施され、審査で動物福祉についても根拠を含めて審査されるよう、代替法の更なる研究と普及のための活動、そして、代替法を研究の現場で実際に使っていくようになるための仕組みの構築が求められます。

化審法改正

化学工業出荷額 世界第3位

2013年日本の化学工業の出荷額は、中国、アメリカに次いで世界第3位。 産業別研究費の製造業に占める割合は、2兆4,869億円で全体の22.1%です。

化学物質の悪影響を最小化するという世界目標

2002年に開催された「持続可能な開発に関する世界首脳会議」(WSSD) において、【化学物質が人の健康と環境にもたらす著しい悪影響を最小化する方法で製造・使用されることを2020年までに達成する】という目標が採択されました(WSSD2020)。 その後、2006年に第1回国際化学物質管理会議(ICCM-1)が開催され、国際的化学物質管理に関する戦略的アプローチ(SAICM)が採択されました。

2020年に向け、各国で化学物質の安全性評価や必要な法律改正が進んでいます。欧州の化学物質規則(REACH)は2007年に施行されました。REACHでは化学物質の安全性は製造者・輸入者に安全性評価を義務付けているのが特徴です。アメリカでは化有害物質規制法(TSCA)の改正について、2015年12月現在アメリカの議会で審議がされています。

化審法改正

日本では2009年に化学物質を管理するための法律である「化審法」が改正されました。 (2011年より完全施行)。既存化学物質も含め全ての化学物質の安全性の評価をすることになりました。 この法改正の際、動物福祉の面においては、衆議院の付帯決議で、【QSARの手法、計測、リスク評価、に関する専門家育成の検討や、学校教育における化学物質に関する教育内容の見直しを図ること】が、また、参議院の付帯決議の中で、【動物試験の代替法の開発・活用を促進すること】が記載されました。

2016年4月に前回の改正より5年が経過することから、化審法施行状況検討会が開催されており、議論が重ねられています。 労働安全衛生法も改正され、化学物質のリスクアセスメントの実施が事業者の義務となります。2016年6月までに完全施行となります。 日本では、WDS2020目標のため、経済産業省、環境省、厚生労働省などで、それぞれに関連する分野における化学物質の有害性試験や暴露評価、リスク評価が始まり、毒性の評価等のため、多くの動物実験が行われました。

■【化合物安全性研究所】動物実験代替法を事業化‐2012年4月から受託スタート

■【生物研】動物使わない安全性試験法開発‐化粧品等の代替法へ期待 (2013/8/19)

法律

化学物質について、対象ごとに法律で規制されています。例えば農薬は農薬取締法(農林水産省)、食品添加物は食品衛生法(厚生労働省)、新規化学物質は化審法(経産省他)、飼料添加物は飼料安全法、医薬品・医療機器、化粧品等は薬事法(※現在は薬機法という名称になっています。以下参照。厚生労働省)などとなっています。

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