動物実験代替法の歴史:世界と日本
代替法は、動物実験が行われる場において、動物愛護の観点より動物を使わず三次元皮膚モデルや角膜細胞などを使って行う試験に置き換える手法のことです。
代替法をめぐる国内外のニュース、状況はどうなっているのでしょうか。
2021年7月現在、トキシコキネティックス、反復投与毒性、発がん性、生殖毒性試験において、動物代替法はありません。
代替法が存在する試験は、皮膚刺激性、光毒性、遺伝毒性、眼刺激性試験でしたが、2021年6月皮膚感作性試験が加わりました。
2021年6月、OECDは皮膚感作の動物実験に大きく取って代わる、初めての動物実験を行わない (=cruelty-free)定義済みアプローチガイドラインを採用しました。
「医療でサルなどの動物実験を行わないのは世界的標準になりつつある」
2005年3月16日、朝日新聞オピニオンに掲載された京都大学教授のコメントです。記事では、関西医大の骨髄損傷・最先端再生治療が紹介され、サルの動物実験を行わずに患者に直接試して進める事、また京都大学教授のコメントとして、「医療でサルなどの動物実験を行わないのは世界的標準になりつつある」との発言も掲載されました。
詳細はリンクをクリックし、ブログでご確認ください。
2020年2月 AMEDの委託で行われた「人由来細胞組織を用いた創薬評価技術動向調査」3D培養(オルガノイド)規模拡大予測
2020年3月 経産省の受託調査として行われ、課題の指摘や提案がなされています。インシリコの現状と課題そして提案
2020年 2020年度の科研費事業で、仮想人体構築学へ助成
2021/4/4 イスラエル ヘブライ大学の研究者 動物実験を行わずにガンの薬を開発 他
海外の医学部での動物実験の置き換え
海外の動物保護団体PETAなどのサイトによると、イェール大学、ハーバード大学、スタンフォード大学などアメリカの医学部の98%において、動物の解剖は行われていないとのことです。
しかし、まだ実験が行われている大学や病院の救急医学トレーニングでは、犬やヤギの喉や胸に穴があけられ、針を心臓まで通したり、また恐ろしい軍隊のトレーニングでは、ヤギや豚が銃でうたれ、ナイフで刺され、手足を切断され、吹き飛ばされたり焼かれたりしています。小児科学プログラムでは、猫やフェレットの喉に繰り返し、挿管訓練でチューブを入れています。
世界に随分と遅れ、日本でも代替法センターが創立される
2005 日本動物実験代替法評価センター (JaCVAM) 設立
1993 日本実験動物医学会 (JALAM) 設立 - - 日本獣医学会の分科会として活動。 2012 日本獣医学会が 公益社団法人になったため、活動面でその影響もある模様。
1989 日本動物実験代替法学会 (JSAAE) 設立
1985 日本実験動物協会 (日動協) 設立
1951 日本実験動物学会 (JALAS) 設立
海外にはJaCVAMのような評価機関であるICCVAMやECVAM以外に、以下に代表されるような代替法専門推進機関があります。
1969:イギリス 医学分野における動物実験の代替法を推進する組織FRAME設立。 イギリスで代替法を支援するためのロード・ダウディング基金設立。
1981:米国ではジョンズホプキンズ大学に代替法を研究するため、代替法センターが開設。 CAAT(Johns Hopkins Center for Alternatives to Animal Testing)
1989:ドイツ 代替方評価のための研究所ZEBET (The Center for the Documentation and Evaluation of Alternative Methods to Animal Experime)設立。
1993: Alternative Research & Development Foundation設立
2004: イギリス 国立3Rセンター NC3R (UK National Center for the Replacement, Refinement and Reduction of Animals in Research))
2005年 動物実験代替法のための欧州連合設立(EPAA:European Partnership for Alternative Approaches to Animal Testing)。
世界における代替法の歴史
2000年~
2004: OECD 4種類の毒性テストで動物実験しないもの方法を承認 (2004年5月23日 BfR)
2002: OECD 試験方法の制限的な国際利用の原則および基準について合意 試験方法は、一方で実験動物の愛護に配慮しつつ、最新の科学的進歩を取り込んでいくため、たえず更新していく必要があります。
2001:アメリカ:NIEHSは、人間および動物の細胞を使うことで、急性毒性試験のために使われる動物の数を減らすことを提案した。
アメリカ議会 環境保護庁が代替法開発に400万ドル予算をとることを承認。
2000:アメリカ ICCVAMとNICEATMは急性毒性試験評価のための試験官内試験のためのワークショップを開催。
OECDはガイドラインから半数致死量を求める試験LD50の削除を公式に発表。
1990年~
1990年代、ヨーロッパ、アメリカであいついで、代替法を評価するための組織ができました。また実際に代替法を承認するためのガイドラインが発表されました。
実際この頃から少しづつ代替法が欧米で承認されはじめました。
1999:イタリア ボローニャにて第3回国際動物実験代替法会議が開催され、「ボローニャ宣言」を採択された。3Rを再確認そして、更に促進するものでした。
この宣言の内容は、全ての国で、どのような研究においても3Rの原則を積極的に組み入れるための法的な枠組みを作ること、全ての動物実験は事前に専門家により科学および倫理の両面について、独立した審査を受けなくてはならないこと、どのような状況においても許されるべきでない動物の苦痛のレベルについての国際的な合意を決めるべきであること、自国での動物実験の規制を避けるために動物実験を他国へ依頼することを受け入れるべきではないこと他などが盛りこまれたものです。
アメリカ ジョン・ホプキンス大学代替法センターはワークショップを開催し、環境保護庁の高生産量既存化学物質試験プログラムの代替法とするべくTestSmart法を発表した。
アメリカ ICCVAMは皮膚腐食試験の代替法としてコロシテックス法を、またアレルギー皮膚炎評価の代替法としてムリンローカルノードアッセイ法を承認した。
1998:ヨーロッパ 代替法を評価する組織ECVAMは、光毒性の代替法として3T3 NRU PTテスト、また皮膚腐食性試験の代替としてエピスキン法およびTER法を承認した。
アメリカで、ICCVAMをサポートする組織として、NICEATM (The National Toxicology Program Interagency Center for the Evaluation of Alternative Toxicological Methods)が設立される。
1997:アメリカの代替法評価のための組織ICCVAMは代替法評価の基準作りのためのガイドラインを発表。
アメリカ メリーランド市に試験官内での実験を進める組織 (The Institute for In Vitro Sciences)が設立される。
1996:オランダにて第2回目のライフサイエンスにおける動物実験代替法の世界大会が開催される。
OECD 国際的な代替法評価の基準作りのためのワークショップを開催。
ジョン・ホプキンス大学代替法センター、動物権利団体HSUS、P&G社他は、代替法についての情報提供をインターネット上で提供始める。(Altweb)
1994:アメリカ政府は代替法を評価する機関ICCVAM (the Interagency Coordinating Committee on the Validation of Alternative Methods) を設立。
オランダで国立の代替法に関する情報センターNCA (The Netherlands Centre for Alternatives to Animal Use)設立される。
1993:NIH(米国国立衛生研究所)はNIEHS(米国国立環境衛生科学研究所)へ代替法の評価や承認の基準作りを作るよう要請。
アメリカのボルチモア市にて世界初のライフサイエンス、教育、研究現場における動物実験代替法大会が開催される。
EU加盟国は2000年までに動物実験における脊椎動物の使用数を50%削減するためあらゆる努力がなされるべきであることに合意した。
省庁間を調整し代替法を促進するグループが第2回目の会議を開催。
1992:ヨーロッパ 代替法を評価する期間ECVAM (The European Centre for the Validation of Alternative Methods)設立される。
イギリス議会において、動物実験して作られた化粧品の販売を1998年1月以降禁止するという修正案が通過。
1991:アメリカ ワシントンDCで省庁間を調整し代替法を促進するグループによる、眼刺激性試験における基準づくりのためのワークショップが開催される。
OECDは急性毒性試験として半数致死量試験の代替法として動物の犠牲が少ない固定用量法を承認した。
日本、ヨーロッパ、アメリカで、急性毒性試験として今までの半数致死量テストLD50をやめることに合意した。
イギリス内務省は、代替法研究のための助成金プログラムを発表。 スイスではチューリッヒに代替法を研究する機関SIAT(The Swiss Institute for Alternatives to Animal Testing)が設立される。
1990:ジョン・ホプキン大学代替法センター(CAAT)とヨーロッパの毒性試験の代替を研究する団体ERGATTは代替法評価のワークショップを開催。
アメリカ カリフォルニア大学代替法センター設立される。
オランダ 動物実験代替法計画で、3Rの研究に70万ドル相当の資金を割り当てる。
日本動物実験代替法学会が設立され、学会誌(AATEX)の発行を始める。
1980年~
1980年代には、消費者運動が欧米でおこり、化粧品メーカーの資金援助などにより、代替法を研究するセンターなどができました。
1989:ドイツ 代替方評価のための研究所ZEBET (The Center for the Documentation and Evaluation of Alternative Methods to Animal Experime)設立される。
アメリカ P&Gが3年間にわたり年間45万ドルづつ大学の代替法へ資金を出すことを発表 エイボン、ドレイズテストを今後行わないことを発表
イギリスで試験管内での毒性試験の第2回目の国際会議開催。
スイスの組織で動物実験なしでの科学研究のために資金を提供しているところが、代替法プロジェクトに70万クローネを投入。
アメリカの動物実験反対団体AAVS (The American Anti-Vivisection Society)は、基金を作りました。それは後に代替法研究開発基金としてしられるARDFで、代替研究をしているいくつかのプロジェクトに毎年年間5万ドル資金提供することを発表しました。
1988:アメリカ 石鹸洗剤連名の代替法プログラムをレビューするため、政府と業界の共同ワークショップが開催される。
カナダ 代替法開発のための団体(J.F. Morgan Foundation for Alternatives Research)が設立される。
スイス 政府による動物実験および代替法のための部署ができる。
1987:アメリカ 動物の権利団体HSUSはノーベル賞の中に代替法の研究を含めるべきであると公表
オランダ 行政、業界、動物福祉団体が参加したオランダ動物実験代替法計画が出来る。
1986:アメリカ 議会が研究および教育における動物実験に代わる代替法という報告書を提出。 EC、加盟国へ法律で3Rを進めるよう要求。
OECDは急性の経口毒性試験のためのガイドラインの変更を発表し、代替法についての議論が始まる。 イギリス 生物学を研究する連名BIBRA (British Industrial Biological Research Association)で代替法への助成金を年間70万ポンドへ引き上げる。
イギリスで試験管内で毒性を試験するための組織IVTS (The Industrial In Vitro Toxicology Society)が設立される。
1985:アメリカ NIH(米国国立衛生研究所)に代替法の研究を要求する法律が出来る。
アメリカ 動物福祉法が修正され、動物に苦痛を与える実験に対しての代替法研究へ多大な関心を払うようもりこまれる。
ヨーロッパで、毒性試験に対する代替法を研究する団体ERGATT (European Research Group on Alternatives to Toxicity Testing)設立される。
1984:イギリス イギリス政府による代替研究への最初の助成金、内務省16万ポンド設置。
1983:スイス 政府が代替法研究に2年間2百万スイスフランを提供する。 食品医薬局は古い手法の半数致死量LD50テストのデータはもう不要であると発表。
1982:アメリカ コルゲート社がひよこの皮膜システム調査に30万ドルを提供する。
1981:化粧品業界からの資金(エイボン、ブリストル・マイヤースキブが主要な寄付者で、これはドレイズテスト反対キャンペーンの成果である)により、ジョン・ホプキン大学代替法センター(CAAT)が設立される。 スイスで動物法の中に「代替法への考慮」が盛り込まれる。
米国ではジョンズホプキンズ大学に代替法を研究するため、代替法センターが開設されました。
1980:アメリカ 活動家ヘンリー・スピラ氏によるドレイズテストへの大規模キャンペーンが行われる。 これにより、ロックフェラー大学に代替法プロジェクトができた。(レブロンはここへ75万ドル搬出
1970年~
1970年代、アメリカやイギリスでは代替法に関する大きな会議が開催されました。
1979:アメリカ 研究近代化条例が動物保護団体UAAによって導入され、動物実験に使われている資金の30-50%は代替法へ割り当てられるという内容で、市民の幅広い指示を得て、アメリカ議会も代替法へ関心を払うことを余儀なくされた。
スェーデン 国レベルでの代替法への最初の助成金1千万円を設置。
1978:イギリス ロンドンで、はヨーロッパで最初の代替法に関する大きな科学的会議が行われた。 動物実験を促進するための組織の会長が代替法を評価する本が出版した。
1977:オランダ オランダ動物保護法は代替法に関して特定の項目を含める。これは現在、政府による代替法研究への数千万円レベルの助成金に発展している。
1975:アメリカ 国立科学アカデミー会議 (National Academy of Sciences Meeting) アメリカで最初の代替法に関する科学会議開催される。
1971:ヨーロッパ評議会が代替法のデーターベースの構築を推奨。これが政府レベルでの最初の代替法推奨の意志表明でした。
1960年~
1960年代、イギリスでは代替法を開発する組織ができ、アメリカでは代替法を開発するための動物愛護団体ができました。
1969:イギリス 医学分野における動物実験の代替法を推進する組織FRAME設立される。 またイギリスで代替法を支援するためのロード・ダウディング基金設立される。
1967:アメリカ 代替法開発に対しての活動をする団体UAA (United Action for Animals)設立される。
1965:イギリス リトルウッド委員会の報告書の中で代替法に特別の関心を払うことにより、少しは得られるものがあると報告。
1962:イギリス イギリス国内で最初の、代替法を科学的に開発するための組織ローソン・テイト・トラストが設立される。
1950年~
1950年代に3Rの考えが世の中に出てきました。